
発語が少ない・言葉が増えない原因は? 2〜3歳の語彙が増える仕組みと伸ばし方
2〜3歳のお子さんを見ていて、「単語は少し出ているのに、増えていかない」「同じ言い方ばかりで心配」と感じたことはありませんか。
言葉の発達は、単語を覚えるだけではありません。その背後には、語彙が育つための土台となる仕組みがあります。
この記事では、語彙(言葉)が増えるメカニズムと、増えにくいときによく見られる原因、そして家庭でできる具体的な関わり方を整理してお伝えします。
なお、「言葉がほとんど出ていない(発語がほぼない)」場合は、悩みの焦点が少し異なります。まずは下記の記事をご覧ください。
2〜3歳で「言葉が増えない」よくある悩みパターン
まずは、よくある悩みのパターンをご紹介します。どれかひとつでも当てはまれば、この記事を読み進めることで気持ちが整理されるはずです。
・発語はあるのに、語彙がなかなか増えない
「ママ」「ワンワン」などは言えるのに、そこから新しい言葉が増えにくい。増えても、動物・乗り物など同じジャンルの言葉に偏りやすいタイプです。
・要求は通じるのに、言葉でのやりとりが増えない
指差し、手引き、表情、泣く・怒るなどで「言いたいこと」は伝わる。でも、言葉を使ったやりとり(会話の往復)が増えにくいタイプです。
・名詞は言えるのに、動詞・形容詞が増えない
「ボール」「でんしゃ」など物の名前は出るのに、「たべる」「いく」「おおきい」など、動きや状態を表す言葉が増えにくいタイプです。
・同じ言い方ばかりで、言い換えが出にくい
「これ」「いや」「あれ」など、少ない言葉で生活が回っている。新しい言い方や言い換えが、なかなか増えていかないタイプです。
このあと、このような悩みの背景にあること(よくある原因)と、家庭でできる関わり方を具体例つきで説明します。
そもそも語彙はどうやって増える?仕組みから解説
語彙が「なぜ増えないのか」を考える前に、まずはどうやって増えていくのかを押さえておくと理解しやすくなります。
語彙の発達は、単語を暗記して増えるというよりも、
- 注意(同じものに注目する)
- 理解(その言葉と意味がつながる)
- やりとり(使って通じる経験をする)
という要素が絡み合いながら、少しずつ積み上がっていきます。これらは順番に進むというより、互いに影響し合いながら同時に育っていくものです。
注意(同じものに注目する)
語彙が増える最初の一歩は、子どもの注意・興味が特定のものに向いていることです。
言葉は、単にたくさん聞いていれば自然に増えていくわけではありません。大切なのは、子どもが今注目している対象と、大人の言葉が重なることです。
たとえば、子どもが目の前を歩く犬に興味を示している瞬間に「わんわんだね」と聞くと、その言葉は今の体験と結びつき、意味の理解につながっていきます。
理解(その言葉の意味がわかる)
言葉は一度聞いただけで、すぐに語彙として定着するわけではありません。
子どもは、いくつかの場面で同じ言葉に出会いながら、少しずつ「この言葉はこれのことなんだ」と理解していきます。
たとえば、公園で犬を見たときに「わんわんだね」と聞き、後日絵本でも犬をみつけたとき、また「わんわん」という同じ言葉を聞く。こうした経験が重なることで、言葉と意味のつながりがより確かなものになっていきます。
やりとり(使って通じる経験をする)
言葉は理解が進むなかで、やりとりを通じて少しずつ「使える言葉」になっていきます。
子どもは最初から上手に話せるわけではなく、まずは声、表情、身振り、指差しなどで気持ちを伝えようとします。
例えば、言葉の理解が進んだあとに、公園で再び犬を見たときに「あ!」と指を差したり、大人の顔を見上げたりすることで、興味があることを伝えるなどです。
その発信に対して大人がまた、「あ!わんわんいたね!」と反応してくれることで、「伝えたら通じる」という感覚が育ちます。こういったやりとりの中で、大人の言葉を音として真似したり、くり返したりしながら、次第に自分でも使える言葉になっていきます。
2〜3歳で言葉が増えない原因5つ|発語が少ないときに見直したいこと
言葉が増えない原因は、1つに絞れないことがほとんどです。
これから紹介する原因の中で「当てはまる・当てはまらない」を判断するよりも、「どこを整えると伸びやすいか」を探る地図として使ってみてください。複数の背景が重なっているケースも少なくありません。
なお、語彙が増えにくい背景には、聞こえ、理解の土台、発音の難しさ、興味の偏りなどが関係することもあります。ここでは、多くの子に共通しやすい基本的な仕組みとして整理しています。
原因①言葉の土台が育っていない
語彙が増えるには、「一緒に見る力(共同注意)」「真似する力(模倣)」「身振り手振りでの意思表示」といった土台が必要です。
共同注意とは、子どもと大人が同じものや出来事に注意を向け合うことです。たとえば、子どもが犬を見て振り返り、大人の顔を確認するような場面が典型です。こうした機会があることで、子どもが「今見ているもの」に大人が言葉を添えやすくなります。
また、模倣も言葉を身につけていくうえで大切な入り口のひとつです。言葉は、いきなり自分で正しく使えるようになるのではなく、まずは身近な大人の表情・しぐさ・声の出し方を真似するところから育っていくことが少なくありません。
さらに、指差しなどの身振り手振りで意思表示ができると「あれを見て」「あれが欲しい」といった意図を大人がくみ取る機会が増え、それに沿った言葉を添えられる場面も増えます。
これらの土台が育っていない場合、「言葉が聞こえても、自分には関係のない”ただの音”」になる傾向があります。
なお、1歳半頃までに指差しが出ているかどうかは、専門的な支援を受ける必要性を検討する上でもよく確認されるポイントのひとつです。
→ 指差しをしないことでお悩みの方はこちらをご参照ください。
原因②発語の動機が少ない
ジェスチャーや手引き、泣き・怒りといった方法で要求が十分通ると、子どもはそれを使い続けます。これは発達段階での自然な行動であり、コミュニケーションの基礎として大切な力でもあります。
ただ、語彙を増やすという観点では、「言葉を使わなくても成功する」経験が多いと、言葉を使う動機が生まれにくくなることがあります。
言葉を発する前に大人が先回りして、要求をすべて叶えてしまうような場合なども同様のことが言えます。
原因③言葉の理解が追い付いていない
言葉が増えないとき、「話す力(表出)」に目が向きがちです。しかし言語発達では、「聞いて分かる力(理解)」が先に育つのが一般的です。
理解できる言葉が増えるほど、話せる言葉も伸びやすくなります。逆に、理解がまだ十分でない場合は、語彙が増えにくい傾向があります。
注意が必要なのは、理解の遅れが見えにくいケースがあることです。生活の流れや身振り、大人の表情を手がかりに動けてしまうと、一見理解しているように見えることがあります。
たとえば「ご飯だよ」と声をかけると食卓に来る子でも、それが「ご飯」という言葉を理解してのことなのか、食卓へ向かう大人の動きを見て動いているのか、判断が難しい場合があります。
原因④言葉への注意が向きにくい環境になっている
周囲の音や刺激が多いと、子どもは言葉に注意を向け続けるのが難しくなることがあります。特に幼児は、必要な音だけを選んで聞く力がまだ発達の途中にあります。
「基本的にテレビがついている」といったような状況は、子どもにとって注意が分散しやすい環境の一例です。
原因⑤発語しても通じない・待ってもらえない経験が続いている
語彙が増えるには、「言ったら通じた」「うまく言えなくても伝わった」という小さな成功体験の積み重ねが大切です。成功体験が言葉を使う動機を支え、さらに進歩しようとする好循環につながっていきます。
一方で、頑張って声にしてみてもなかなか汲み取ってもらえない、急かされる、といったような経験が続くと、子どもの意欲が下がり、言葉を発すること自体を減らしていくことがあります。
発語が少ない子の語彙を増やす│家庭でできる関わり方
ここからは、語彙を増やすために具体的に何をすればいいかのパートです。気になったものから、できる範囲で試してみてください。
語彙を増やすには「言わせる」より「一緒に見る」
語彙が増えやすいのは、子どもが興味を向けたものに大人が言葉を合わせるときです。
・子どもがおもちゃを手に取った → 一緒に見ながら「トラック!かっこいいね」
・子どもが窓の外を見ている → 横に並んで「あ、ねこ!ねこいるね」
「言ってみて」「もう一回言って」と促すより、子どもが見ているものに大人が言葉を合わせる。子どもは「教えられる」よりも、「一緒に経験する」やりとりの中で言葉を覚えやすいことが知られています。
声かけは短くシンプルに
長い説明より、状況にぴったりの短いラベルが子どもには入りやすいです。大人は説明したくなりますが、幼児にとって長い文章は処理しにくいことがあります。
・車が向こうの道路を走ってるね→「ブーブー、はしってる!」
・積み木がたおれて落ちちゃったね → 「おちた!」
短い言葉ほど真似しやすく、やりとりの中で繰り返し聞きやすくなります。語彙を増やしたいときは、まず大人が短く話すことを意識してみましょう。
「どっち?」の選択式で応えやすくする
「何がしたい?」「何食べたい?」のような質問は、幼児には難しいことがあります。答えの幅が広すぎて、どう返せばいいかわからなくなるためです。
そんなときは、2択の質問にすると答えやすくなります。
・「ジュースにする? 牛乳にする?」
→ 指差しでも視線でもOK
・「公園行く? おうちにいる?」
→ うなずきでもOK
子どもが指差しや視線で答えたら、大人が「牛乳ね、牛乳にするね」と言葉にして返せば十分です。子どもが一音でも出せたら大成功です。
こうしたやりとりを積み重ねることで、「言葉で伝えると通じる」という経験が増えていきます。
同じ遊びを少しずつくり返す
語彙は一回では定着しません。同じ言葉に、ちがう場面で何度か出会うことで記憶に残ります。ただし、同じ遊びを長時間続けるのは大変なので、「短い反復」がおすすめです。
・「もういっかい」「ころころ」を増やしたい → ボールを転がす遊びを2〜3分 × 1日2〜3回
・動物や色の名前を増やしたい → 同じ絵本を1週間くり返して読む
・「あつい」「つめたい」「かける」を増やしたい → お風呂でいつも同じ声かけを続ける
「また同じ遊び?」と思っても、子どもにとっては同じ遊びのくり返しが語彙の定着につながっています。
言葉を伸ばす絵本・遊びのポイント
やりとり絵本のポイント
- 1ページごとに短いひと言でOK。長い説明より、短い言葉を何度も。
- 子どもが指差したら、そのページだけ短く言葉をそえてください。他のページに戻ってもOK。
- 「読み聞かせ」より「子どもが見る→大人がひと言→子どもが反応する」のくり返しを意識してみてください。
- 同じ本を何度読んでもOK。同じ場面で同じ言葉が繰り返されることが、定着につながります。
語彙が増えやすい遊び
落とす、入れる遊び
コップや箱に物を「入れる」、上から「落とす」といった遊びは、動きがわかりやすく、同じ言葉を何度もくり返しやすいのが特徴です。
たとえば、ボールを箱に入れながら「いれた」、箱をひっくり返して「でた」、テーブルから落ちたら「おちた」、もう一度やりたそうなら「もういっかい」と短く言葉を添えます。大人がたくさん説明する必要はなく、子どもの動きに合わせて1〜2語で返すだけで十分です。
ごっこ遊び
ぬいぐるみや人形を使ったごっこ遊びでは、気持ちや状態を表す言葉が自然にでます。
たとえば、ぬいぐるみを寝かせながら「ねんね」、転ばせて「いたい」、絆創膏を貼るまねをして「なおった」、食べるまねをして「おいしい」といった形です。長いストーリーを作ろうとしなくて大丈夫です。「寝る」「痛い」「治る」など、短い場面を何度もくり返す方が、子どもにはわかりやすいです。
選ぶ・渡す遊び
おもちゃや食べ物、服などを2つ並べて「どっち?」と選んでもらう遊びです。要求に関する言葉を増やしやすい場面です。
たとえば、目の前に果物を2つ並べて「りんご? バナナ?」、車のおもちゃを2台見せて「赤? 青?」と聞きます。子どもが何らかの意思表示をしたら、「バナナにするね」「赤だね」と大人が言葉にして返します。意思表示さえできていれば、無理に言葉で答えさせる必要はありません。
お風呂遊び
お風呂は、毎日ほぼ同じ流れでくり返せるので、語彙を増やしやすい場面の一つです。
たとえば、お湯に触れながら「つめたい」「あったかい」、頭からお湯をかける前に「かけるよ」、泡をつけて「いっぱい」「あわあわ」、流しながら「きれい」「ながれた」など、体で感じることにそのまま言葉を添えられます。
感覚と言葉がセットになりやすいため、子どもにとって意味がつかみやすく、日常の中で自然にくり返せるのが強みです。
やめた方がいい関わり方
- 「これは何?言ってみて」と何度も聞いて、やりとりがテストのようになる
- 言い間違いをすぐに直して、会話がそこで終わってしまう
- 子どもが声を出す前に、大人が先回りしすぎてしまう
- 「ちゃんと言って」「もう一回」と何度も促す
これらが絶対にいけない、というわけではありません。ただ、こうした関わりが続くと、子どもの興味や発語に合わせて言葉を返す機会が減りやすくなります。また、やりとりの意欲自体を低下させてしまうこともあります。
言葉が増えない状態はいつまで続く?伸び始めるサインとは
言葉の発達は個人差が大きく、「何歳までに必ず増える」とは一概に言えません。
実際には、同じ2〜3歳でも、言葉がゆっくりと増えていく子もいれば、ある時期をきっかけに増え方が変わる子もいます。そのため、「まだ増えていない」という事実だけで判断するのではなく、今どんな力が育ってきているかを見ることが大切です。
言葉が増え始める前には、そのサインが出てくることがあります。それを知っておくことで、不安の中でも「まったく変化がないのか」「土台は育ってきているのか」を整理しやすくなります。
言葉の土台が育っているサイン
単語数がすぐに増えなくても、次のような変化が見られたら、言葉の土台が育ってきているサインです。
- 視線が合う時間が増えた
- 表情が豊かになってきた
- 指差しが増えた
- 「見て」と共有したそうな様子が増えた
- 短い指示(「持ってきて」「おいで」など)が通る場面が増えた
- 要求の出し方が増えた(泣くだけでなく、手を引く・持ってくる など)
「まだ言葉が増えていない」ことだけを見るのではなく、こうした土台の変化が出てきているかを見ていくことで、今どんな関わりが合っていそうかも考えやすくなります。
言葉が増え始める前に見られやすい変化
実際に語彙が増え始める少し前には、真似が増えてくることがあります。
- 音まねや動作まねが増える
- 「ぶーぶー」「わんわん」などの擬音をまねする
- 大人の言葉や表情をまねすることが増える
こうした変化は、言葉の理解が進み、自分でも表現を試し始めているサインと考えられます。そのため、まだはっきりした言葉が増えていなくても、変化が見られているなら、発語に向かう土台が育ってきている可能性があります。
おわりに
「言葉が増えない」と感じたとき、「もっと教えなきゃ」と焦る気持ちはよくわかります。でも、語彙が増えるのは「教える量」よりも、「一緒に見る→意味づけ→やりとり→成功体験」の積み重ねの中からです。
原因はひとつではないことが多いので、この記事で紹介した観点を状況整理に使ってもらえると嬉しいです。
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参考文献・根拠資料
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